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君を不安にさせる全てのものから
君を守ってあげたいのに  



もしもあなたに出会わなければ
もしもあなたに恋をしなければ
一体どんな風に息をして
日々を送っていたのでしょう

考えもつかないほど
僕の中のあなたの占める割合は意外にも多い



「誕生日おめでとうございます」
時計の針が12時を指したので隣に座る彼に言う。
今夜は暗黙の了解で夜更かし。
「ありがとう。
大して去年から成長していない気もするけどな」
毎年のことなのにシュミットは誕生日を祝われると少し照れたように言って笑った。
「本当に欲しいものなかったんですか?
変に遠慮なんかしないで下さいよ」
今年のプレゼントは何がいいかと聞いてみたら
じゃあデートをしろと言われてしまった。
でもそれって気を遣われたような気がしてちょっといやだなぁ…。
「なんで?ホントにデートしたかったんだし、
いいじゃないか。まぁきっちりオゴってもらうつもりだけどな」
そう言って顔を近づけてきたので
僕が目を閉じるとシュミットの唇は僕の額に軽く触れるだけですぐに離れてしまった。
それを少し物足りないと感じている自分に気付いて少し恥ずかしくなってみたり…。
何だろう…近頃変なことばかり気になる
プレゼントだっていつもは聞いたりしないのだけど
むしろどうしたら喜んでもらえるのか色々考えているのが好きで自分で選んでいたのに。
急にシュミットの欲しいものが分からなくなってしまった。

何を 望んでいるのか

あるいは 少しの不安

どうして分からなくなってしまったんだろう。
シュミットはきっと僕があげたら何でも喜んでくれるのだろうけど
それは本当に嬉しいことなのかな
僕は本当にシュミットを喜ばせてあげられているのかな

不安になったので思わず訊いてしまった

「今年は何がいいですか?」

こんなことは初めて

答えるシュミットは深く考える風でもなく

「じゃあ デートしてよ」

そんなものなんだろうか
何だか物足りない
そんなのいつでも出来るじゃない

何だろう
もっと強く望むことは何だろう
シュミットの本当に欲しいものって何だろう


答えはまだありません



「シュミット」


腕を伸ばして キスをした

切なくて 自分から彼の首に手を回して
深く口付けてみた

何だろう
どうしてこんなに不安なんだろう
悲しみでいっぱいになってしまいそうで怖い

あなたの生まれた日にこんな気持ちでいるなんて…

「エーリッヒ…?」

ようやく離れるとシュミットが驚いた顔をして僕を見ていた。
「急にどうしたんだ?」

シュミットの手が僕に触れる
髪に
頬に
唇に

僕は目を閉じて息を吐いた

「お前がこんなこと、珍しいじゃないか」
「別に…何だか急にしたくなって」
ダメですかと小さく問うとシュミットは「嬉しいよ」と言って僕を膝の上に引き寄せた。
顔を近づけて 今度はちゃんと唇に
何度も角度を変えて 息ができなくて思わず開いた唇のスキマから舌を滑り込ませて、深く、長いキスをする。
「……シュミット…僕のこと、好きですか?」
「…え?」
吐息の合間に漏らした僕の声にシュミットが目を開ける。
「僕のこと、好きですか?」
もう一度
「好きだよ。大好き。お前がいてくれて良かった…」
「シュミット…僕も…あなたが、好きです。すごく。
あなたがいてくれて良かった…っ」
シュミットの言葉をなぞるようにして僕はずっと言いたかったことを言った。
悲しくて
切なくて
そして愛しかったので

あなたが
こんなにも僕を愛してくれているあなたが
僕もあなたを同じに愛しているのだと叫びたかった
僕は言葉を 感情を
うまく伝えられないのだけれど
いつももどかしくて
大事なことを伝えられないのだけれど
あなたには
今日のあなたにはどうしても言いたくて

僕は泣きながら何度も好きだと言って
何度も何度もキスをした



どうしてだろう
こんな気持ちになるのは

あなたがこんなに好きなのに
こんなに悲しい

あなたがこんなに愛しいのに
こんなに切ない

この気持ちを何て言ったらいいのか分からなくて
自分の不器用さがもどかしくて涙を零すのです






目が覚めるともう日は高くなっていた。
昨夜あのままソファの上で服を脱ぐのももどかしくて着たまましてしまったので随分ひどい格好をしている。
おまけに泣きじゃくっていたのできっと顔もひどい。
二人とも何かに掻き立てられるように求め合って疲れ果ててベッドに突っ伏して眠りについた。
シュミットも隣でまだ眠そうにしている。
僕らはぐしゃぐしゃのシーツにくるまって目が合って何だかおかしくて笑った。
「誕生日おめでとうございます」
改めて言う。
シュミットはくすぐったそうに笑って僕の頬に軽くキスをした。
「昨夜はものすごいプレゼントをもらった気分だったよ」
今までもらった中で一番すごかったなぁと言ってシュミットが尚も笑うので僕は恥ずかしくなって目を逸らした。
「…わ、忘れてください。あんなの。恥ずかしい…」
本当に、どうしてしまったんだろう。
何が僕の中に起こったんだろう。
無我夢中で、シュミットにしがみつくように求めて。
何度も好きだと言って 何度も好きかと訊いて
その度にシュミットは何度も好きだと答えた。
その繰り返し。

「忘れないよ。まさかお前からあんなに好きの嵐を浴びることになるなんて夢にも思わなかったから。
でも、良かった。安心したよ。ちゃんとお前が私を好きだって分かったから」
思いもかけなかった言葉
僕はただシュミットを見つめた
「お前、あんまりそういうの言わないから。
苦手だって分かってるけど。たまには、やっぱり言って欲しいもんな」


疑うわけじゃないけれど
時々不安になるから
口に出して言わなくても分かるなんて言うけれど
それは強がりに過ぎない

本当はもっとちゃんと言って欲しい
ちゃんと好きだと言って欲しい
ちゃんと愛していると

私の空回りではないと
分かり易いように言って


「シュミット…」

昨夜あんなに泣いたのに
まだ涙が零れてしまって
僕はそれを拭う気にもなれずに静かに涙を流した。


僕が感じていたのは
あるいはあなたの不安

あなたが感じていたのは
あるいは僕の不安


当たり前のように君がいて
当たり前のようにキスをして
求め合うことも

だけど本当に相手が求めるものを
欲しがっているものを
互いに与えられているのか不安で


お互いが分からなくて
いつも悲しくて切なくて

そして愛しい

僕たちは
いつもお互いを不安にさせまいとして
その実
一番不安にさせるのが
お互いの存在なのだと言うことを知る



あなたが好きです
あなたが好きです



だからとても不安なんです



「シュミット…好きです。 あなたがいてくれて良かった」


生まれてきてくれて ありがとう

あなたのいない世界では
もうどうやって息をしたらいいかさえ分からない


「うん。私も…隣にいるのがお前で良かった」

僕たちはそっと目を閉じて
昨夜から数えてもう何度目になるのか分からないキスをした
今日一日を始める為に。





二人つれだって約束のデートをしよう


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シュミット様お誕生日おめでとうございます(半笑いで)
大分遅れましたがコレがオデの愛のカタチだ!どーだ!!(…)
これ、「きみが泣いていないか〜」が落ちると決まった時に
「せめてラブったSSでもトークペーパーにつけて無料配布して
シュミエリストぶりをアピールしよう」と思って書いてたんですが
何か、切羽詰まってるときってうまく書けないてゆーか
サムイってゆーか もう全然ダメだったので結局おミソに
ってゆーコトを書かなきゃバレないのにね!
ラブってるのかどうかもアヤシイですしなぁ…
へへ
ウチのエリ子さんは普段はクール(?)にしてあんま好き好き言わないですが
実は隠れてものっそい情熱系だと思うんですよ。
普段あんま言わない方が何かありがたみありますしね。
(そーゆー問題なのだろうか)
20020507